東京高等裁判所 昭和27年(う)305号 判決
按ずるに、病院の麻薬管理者が当該病院において施用するため、交付した麻薬が正規の届出のない所謂未報告の麻薬であるときは、麻薬取締法第十四条第一項所定の帳簿に麻薬の品名、数量及び交付の年月日を記入しなくても同法第五十九条所定の罪責を問わるべきものではないと解するのが相当である。けだし、右管理者において、かかる麻薬を施用のため交付することは刑罰の制裁を伴う行為(同法第四十三条第二項、第五十九条各参照)であるから、かかる場合、右のごとき所要の各事項を記帳することは右交付の所為が発覚する端緒となる虞があつてこれを期待することが不可能であるからである。果して然らば原審が被告人大森加寿雄に対する本件公訴事実中、原判決主文第五項(イ)に記載されている点は犯罪を構成しないものとし、この点につき無罪の言渡をしたのは相当であつて、原判決には何等所論の違法はなく、論旨は理由がない。